富裕層営業の職務経歴書は担当数が少ない?預かり資産と継続年数で示す
この記事の結論
富裕層・資産家向け営業の職務経歴書は、契約件数ではなく預かり資産残高と資金純増、担当世帯数、取引継続年数を組にして書きます。担当32世帯・預かり資産128億円・資金純増8億円・取引継続年数の平均11.2年(記入例)のように並べると、担当が数十世帯しかないことが正常だと伝わります。顧客の職業と地域と資産額を重ねると個人が特定されるため、資産帯ごとの世帯数の分布に置き換えます。
この記事は富裕層・資産家向け営業の実績を、預かり資産・継続年数・紹介の3点と、顧客が特定されない伏せ方で書き切ることを決めきるためのものです。職務要約から自己PRまでの全体の型、実績指標の対応表、数字で示せる実績がない場合の書き方、社名や売上を書いてよいかの判断は、営業職の職務経歴書にまとめています。様式そのものを探している方は、そちらの入力フォームからそのまま作れます。
入力フォームへ富裕層・資産家向け営業とは(職務経歴書での扱い)
富裕層・資産家向け営業とは、金融資産や不動産を多く持つ個人と、その一族・資産管理会社を継続的に担当し、運用・保全・承継の相談に応じながら自社の商品やサービスを提供する営業です。求人票ではウェルスマネジメント、プライベートバンキング、資産家担当、外商、資産承継コンサルティングなどと呼ばれます。担当は数十世帯と少なく、1世帯との取引が年単位から世代単位で続くのが普通で、成果は「今年いくつ売ったか」ではなく「いくら預かり、どれだけ増やし、何年続いているか」で測られます。
職務経歴書で手が止まるのは、件数を書いた瞬間です。年間の新規は数世帯、契約は年に数回しかなく、件数型の営業と同じ書式に載せると実力より小さく見えます。かといって預かり資産の金額や案件の中身を具体的に書くと、顧客の職業・地域・年代・資産額が重なって個人が絞り込めてしまいます。本記事は、担当世帯が少ないことを前提にした指標の並べ方と、顧客が特定されない粒度まで丸めたうえで規模を伝える書き方を扱います。
個人の資産運用を扱っていても、担当顧客が数百人規模で新規口座開設と手数料収益が主指標になる仕事は証券営業・リテール営業の職務経歴書で扱います。個人の保障ニーズに保険で応える仕事は生命保険営業の職務経歴書の範囲です。中小企業のオーナー社長が相手で、法人としての導入可否を社長が即決する型の営業はSMB営業(中小企業・社長決裁)の職務経歴書にまとめています。本記事が受けるのは、決裁に本人だけでなく配偶者・後継者・顧問税理士が関与し、法人と個人の資産が地続きになっている相手です。
百貨店の外商、金融機関のプライベートバンカー、M&A・事業承継の仲介、高額商材(宝飾・美術・高級車など)の担当は、いずれも本記事の型に業界固有の指標を1つ足す形になります。足す指標は後半の節で1業態1行にまとめます。
職務経歴書の完成記入例(富裕層・資産家向け営業)
先に完成形を示します。金融機関の資産運用部門で9年、うち直近6年を富裕層の専任担当として過ごした人が、直近1年の数字を中心にまとめた例です。数値はすべて記入例で、世帯数・金額・比率のどれを足しても合計が動かないようにそろえています。
記入例
職務要約
金融機関の資産運用部門で9年間、うち直近6年は富裕層・資産家の32世帯を専任で担当してきました(記入例)。預かり資産は期首116億円から期末128億円へ増え、相場の評価増2.8億円と社内他部門からの担当移管1.2億円を除いた資金純増は8.0億円です(記入例)。新規のお取引は年4世帯で、うち3世帯(75.0%)は既存顧客と提携先の税理士法人からの紹介によるものです(記入例)。担当収益は年8,400万円(目標8,000万円・達成率105.0%)、部内14名中2位でした(記入例)。顧客の氏名・法人名・個別の取引内容は守秘のため記載せず、資産帯ごとの世帯数と合計額で示しています。
職務経歴
株式会社〇〇〇〇(金融/従業員約4,000名) ○○○○年○月〜現在 資産運用部門 主任(記入例)
- 【所属】首都圏の営業拠点(富裕層担当14名・拠点長1名) 主任(○○○○年○月〜)(記入例)
- 【営業対象】個人富裕層32世帯(事業オーナー、医療・士業、不動産オーナー、上場企業役員の4分類)。決裁には本人のほか配偶者・後継者・顧問税理士が関与(記入例)
- 【商材】預金・投資信託・債券・保険などの金融商品と、相続・事業承継に関する提案。銘柄・構成比・手数料率は守秘のため記載していません(記入例)
- 【営業手法】既存世帯への定期面談(年384件・1世帯あたり年12.0回)を軸に、既存顧客と提携士業からの紹介受け(年12件)で新規を開拓。架電・飛び込みによる自己開拓は行っていません(記入例)
- 【実績・成果】(直近1年・すべて記入例)
- 担当世帯 32世帯(期首30世帯+新規4世帯−離脱2世帯)。期首30世帯のうち継続28世帯(継続率93.3%)(記入例)
- 預かり資産 期末128億円(期首116億円・前年比110.3%)、1世帯あたり平均4.0億円(記入例)
- 残高増12億円の内訳:資金純増 8.0億円/市場評価による増加 2.8億円/社内他部門からの担当移管による受入 1.2億円(記入例)
- 資金純増8.0億円の内訳:新規世帯からの社外資金 3.6億円/既存世帯の追加預入 6.8億円−引出・他社移管 2.4億円=純4.4億円(記入例)
- 資産帯別:1億円以上5億円未満 20世帯(62.5%・小計36億円)/5億円以上10億円未満 8世帯(25.0%・小計48億円)/10億円以上 4世帯(12.5%・小計44億円)(記入例)
- 新規 4世帯・受入資産 4.8億円。うち紹介経由 3世帯(75.0%・社外資金3.6億円)、社内他部門からの担当移管 1世帯(1.2億円)(記入例)
- 紹介 年12件(既存顧客7件・提携士業5件)→ 面談8件(66.7%)→ 取引開始3世帯(紹介の25.0%、面談の37.5%)(記入例)
- 離脱 2世帯(相続に伴う口座移管1世帯・他社移管1世帯)、資産流出 1.8億円(記入例)
- 取引継続年数 担当32世帯の平均11.2年(最長26年)。うち自分が担当した期間は平均4.8年(記入例)
- 担当収益 年8,400万円(目標8,000万円・達成率105.0%、前年7,600万円・前年比110.5%)。期中平均残高122億円に対する収益率 0.69%(記入例)
- 相続・事業承継の提案 年14件、うち実行 6件(42.9%)。内訳は自社株・事業承継2件、不動産の組み替え2件、保険を用いた納税資金の準備2件(記入例)
- 提携士業・提携先 8先(税理士法人5・弁護士法人2・不動産会社1)、うち年内に紹介の往来があった 5先(記入例)
- ※顧客の氏名・法人名・所在地・保有銘柄・1世帯ごとの資産額は、守秘義務のため記載していません。世帯数・合計額・資産帯の分布は、個人に還元されない集計値として記載しています
活かせる経験・知識・スキル
- 個人富裕層32世帯・預かり資産128億円の継続担当(1世帯あたり平均4.0億円)(記入例)
- 相場の評価増減を除いた資金純増での預かり資産の積み上げ(年8.0億円)(記入例)
- 既存顧客・提携士業からの紹介による新規開拓(紹介12件→面談8件→取引開始3世帯)(記入例)
- 相続・事業承継の提案と実行(年14件・実行6件)、税理士・弁護士・不動産会社との連携(提携先8先)(記入例)
- 顧客が特定されない粒度に丸めたうえでの資産情報の記録・社内報告と、家族間で意向が分かれる場面の調整
資格
- 普通自動車第一種運転免許(○○○○年○月 取得)
- 2級ファイナンシャル・プランニング技能士(○○○○年○月 取得)
- 宅地建物取引士(○○○○年○月 登録)
記入例の数字は、どの切り口から足しても合計が一致するように置いています。資産帯別の世帯数は20+8+4=32世帯、小計は36億円+48億円+44億円=128億円で、1世帯あたり平均は128億円÷32世帯=4.0億円です。残高増12億円は資金純増8.0億円・市場評価増2.8億円・社内他部門からの担当移管による受入1.2億円に分かれ、資金純増8.0億円は新規からの社外資金3.6億円と既存の純増4.4億円(追加預入6.8億円−引出・他社移管2.4億円)の合計です。世帯数も期首30世帯+新規4世帯−離脱2世帯=32世帯で動きます(いずれも記入例)。面接で最初に確かめられるのは金額の大きさではなく、切り口を変えても数が合うかどうかです。
職務経歴書は、履歴書では書ききれない具体的な職務内容と実績を伝える書類だと、ハローワークインターネットサービスの「履歴書・職務経歴書の書き方」でも位置づけられています。富裕層営業でいう「具体的」とは、顧客の来歴を細かく描くことではありません。担当した規模と、増やした金額と、続いた年数を読み手が追える状態にすることです。入力フォームの「業務内容と実績・成果」は【所属】【営業対象】【商材】【営業手法】【実績・成果】の5ブロックを1つの欄に続けて書く形なので、富裕層営業の情報は次のように振り分けます。
- 【所属】拠点の所在は「首都圏の営業拠点」程度に丸め、同じ担当をしている人数と役職を書きます。人数は順位の分母になるので必ず入れます。
- 【営業対象】世帯数と、顧客の職業を4分類ほどにまとめた名前だけを書きます。決裁に誰が関与するか(配偶者・後継者・顧問税理士)を1行足すと、商談の重さが伝わります。
- 【商材】金融商品なら種別まで、物販なら品目と価格帯まで。銘柄名・型番・手数料率は書きません。
- 【営業手法】面談の頻度と紹介の受け方を書きます。自己開拓を行っていないなら「行っていない」と書くほうが、実態と合って読み違えられません。
- 【実績・成果】預かり資産と世帯数を組にした行から始め、資金純増、資産帯の分布、新規と紹介、離脱と継続、収益、相続・事業承継の順に並べます。各行に分母と期間を添えます。
職務要約の組み立て方そのものは営業職の職務経歴書の書き方、数字にできる実績が手元にない期間の扱いは営業職の職務経歴書(数字で示せる実績がない場合)にまとめています。
担当が数十世帯しかない実績は、何を主指標にするか
預かり資産残高と資金純増を主指標に置き、担当世帯数・取引継続年数・紹介経由の比率を同じ並びに足します。富裕層営業の求人に応募する読み手が最初に不安になるのは、契約件数の少なさです。記入例の年4世帯という数字は、件数型の営業と並べれば圧倒的に小さく見えます。ところが富裕層営業では、担当世帯が増えすぎることは1世帯にかける時間が減ることを意味し、社内でも歓迎されません。件数の少なさは弱点ではなく、この仕事の設計そのものです。件数を大きく見せようとせず、金額と年数の軸に置き換えるのが正しい対処になります。
| 指標 | 書き方(記入例) | 押さえどころ |
|---|---|---|
| 預かり資産残高 | 期末128億円(期首116億円・前年比110.3%) | 期首と期末の両方を書く。時点のない残高は読み手が比べられない |
| 資金純増 | 8.0億円(残高増12億円から市場評価増2.8億円と社内移管1.2億円を除く) | 相場で増えた分と自分が集めた分を必ず分ける |
| 担当世帯数 | 32世帯(期首30+新規4−離脱2) | 少ないことが正常。増減の内訳を添えて動きを見せる |
| 1世帯あたり平均 | 4.0億円(128億円÷32世帯) | 平均だけでは偏りが消える。資産帯の分布と対で置く |
| 資産帯の分布 | 1億〜5億未満20世帯/5億〜10億未満8世帯/10億以上4世帯 | 帯ごとの世帯数と小計まで。1世帯ごとの金額は書かない |
| 取引継続年数 | 担当32世帯の平均11.2年(最長26年)、自分の担当期間は平均4.8年 | 前任者から続く年数と自分の年数を分けて書く |
| 継続率 | 期首30世帯のうち継続28世帯(93.3%) | 分母は期首の担当世帯数。離脱の理由を1行添える |
| 紹介経由の新規比率 | 新規4世帯のうち紹介3世帯(75.0%) | 紹介元の種類(既存顧客・提携士業・社内)で内訳を割る |
| 担当収益 | 年8,400万円(目標8,000万円・達成率105.0%) | 会社が本人の評価指標として開示している場合に限る |
| 相続・事業承継の提案 | 年14件、うち実行6件(42.9%) | 提案と実行を分ける。実行までの期間は年単位でずれる |
| 面談件数 | 年384件(月平均32件、1世帯あたり年12.0回) | 少ない顧客に何回会ったかが、この職種の行動量 |
| 銘柄・手数料率・1世帯ごとの残高 | (書かない) | 取引内容そのもの。面接でも触れない |
12項目のうち、富裕層営業でしか書けないのが資金純増と取引継続年数です。預かり資産は相場が上がれば何もしなくても増え、下がれば守っていても減ります。残高の前年比だけを書くと、良い相場の年は実力より大きく、悪い相場の年は実力より小さく読まれます。記入例では残高増12億円を資金純増8.0億円・市場評価増2.8億円・社内移管による受入1.2億円に割り、自分が動かした分だけを取り出しています(記入例)。相場が下がった年度なら、残高が減っていても資金純増がプラスであることを示せば、預かった金額を増やした事実は残ります。
取引継続年数は、応募先がいちばん知りたい情報でありながら、書き落としやすい行です。富裕層の口座は担当者が代わっても動かないため、残高の大半は前任者や店舗の歴史がつくったものです。そこを黙って自分の実績として出すと、面接で担当開始時期を聞かれた瞬間に説明がつかなくなります。「担当32世帯の取引継続年数は平均11.2年、うち自分が担当した期間は平均4.8年」(記入例)と2つの年数を並べれば、引き継いだ資産と自分が積んだ資産の関係が1行で伝わり、そのうえで継続率93.3%と資金純増8.0億円が自分の仕事として読まれます。
順位や表彰を書く場合は、分母となる人数と期間を同じ行に置きます。順位の分母のそろえ方と、社内表彰の名称をどう説明するかは表彰歴・社内順位の書き方の職務経歴書にまとめています。金額と率について分母と期間をそろえる一般的な考え方は営業職の職務経歴書(営業実績を数字でどう書くか)にまとまっています。
富裕層のお客様を担当し、預かり資産は128億円まで拡大しました。信頼関係を大切にし、長くお付き合いいただいています。(記入例)
128億円が引き継いだ残高なのか自分が集めた金額なのか、相場で増えたのか預入で増えたのかが読めません。「長くお付き合い」に年数が無いため、担当歴の長い人にも着任1年目の人にも見えます。
・担当32世帯(期首30+新規4−離脱2)、預かり資産 期末128億円(期首116億円・前年比110.3%)、1世帯あたり平均4.0億円(記入例)
・残高増12億円のうち、市場評価による増加2.8億円と社内移管による受入1.2億円を除いた資金純増は8.0億円(新規からの社外資金3.6億円+既存の純増4.4億円)(記入例)
・取引継続年数 平均11.2年(最長26年)、うち自分の担当期間は平均4.8年。期首30世帯のうち継続28世帯(継続率93.3%)(記入例)
引き継いだ資産と自分が積んだ資産が分かれ、相場の影響も切り離されています。継続率と継続年数があるため「関係を維持できる人」という主張が数字で裏づけられ、面接で最初の説明が要らなくなります(いずれも記入例)。
顧客の属性は、どこまで書くと特定されるか
職業・地域・年代・資産額のうち2つ以上を重ねた時点で特定される前提に立ち、世帯数と資産帯の分布だけを残して他は落とします。富裕層営業の職務経歴書が難しいのは、書けば伝わる情報ほど個人を絞り込むからです。「地方都市で病院を経営する70代のオーナー」(記入例)は、その地域の同業者なら数人まで候補を絞れます。そこに資産額と相続の時期が加われば、ほぼ1人に定まります。守秘義務違反かどうか以前に、顧客の情報を社外の書類に書く人だと読まれた時点で、この職種では致命傷になります。
| 書きたくなる情報 | 職務経歴書での置き換え(記入例) | 丸める理由 |
|---|---|---|
| 顧客の氏名・法人名・屋号 | 「個人富裕層32世帯」と世帯数だけ | 1件でも出せば守秘の線を越える。伏字も推測される |
| 創業家3代目・元経営者などの来歴 | 「事業オーナー」「上場企業役員」の大分類と件数 | 来歴は業界内で1人に絞り込める情報になる |
| 1世帯ごとの資産額 | 資産帯ごとの世帯数と小計(1億〜5億未満20世帯・小計36億円) | 金額と属性が結び付くと特定に直結する |
| 顧客の業種と地域の掛け合わせ | どちらか一方に丸める(「医療・士業」だけを残す) | 2つ重なると母数が数世帯まで小さくなる |
| 担当店舗名・支店名 | 「首都圏の営業拠点(富裕層担当14名)」 | 拠点名と顧客層の組で担当先の範囲が絞られる |
| 相続が発生した時期・案件の経緯 | 「相続・事業承継の提案14件、実行6件」と件数だけ | 時期は登記・公表情報と突き合わせられる |
| 保有商品の銘柄・構成比 | 「預金・投資信託・債券・保険」と種別だけ | 銘柄は取引内容そのもので、伏せる対象 |
| 顧客からの感謝の言葉・手紙の引用 | 書かない(面談頻度と継続年数に置き換える) | 引用文そのものが発信者を特定する材料になる |
| 担当世帯数・預かり資産の合計 | そのまま書ける(会社が非開示としていない範囲で) | 集計値は個人に還元されない。規模を示す中心になる |
丸めても規模が伝わるのは、集計値の粒度を1段だけ細かくするからです。「担当32世帯・預かり資産128億円」だけでは平均しか読めませんが、資産帯を3つに割れば、5億円以上の世帯が12世帯(8世帯+4世帯)あり、そこに92億円(48億円+44億円)が集まっていることまで読めます(記入例)。3つの帯に割った時点で、どの帯にも複数の世帯が入っているので、1世帯を指し示すことにはなりません。帯を細かく割りすぎて1世帯だけの帯が生まれたら、そこは隣の帯と合流させます。判断の基準は「その帯に何世帯入っているか」で、1世帯なら書かない、というだけです。
職業の分類も同じ考え方で決めます。記入例では事業オーナー、医療・士業、不動産オーナー、上場企業役員の4分類にしていますが、担当32世帯がすべて医療関係なら4分類には割れません。その場合は職業を1つに丸めたうえで地域を落とすか、職業を落として資産帯だけを残します。両方を残したまま細かくするのが、いちばん危ない書き方です。伏せた事実そのものを1行書いておくと、情報を出し惜しみしたのではなく守秘に従ったのだと読まれます。記入例の末尾に置いた「※顧客の氏名・法人名・所在地・保有銘柄・1世帯ごとの資産額は、守秘義務のため記載していません」という注記が、その1行にあたります。
何を伏せ何を書けるかの一般的な線引き、社名そのものを出せない場合の会社の説明の仕方は守秘義務で社名・数値が書けないときの職務経歴書にまとめています。富裕層営業に固有なのは、社名ではなく顧客の属性のほうが先に特定されるという順番です。勤務先は書けても顧客は書けない、という状態を前提に組み立てます。
地方都市で病院を経営する70代のオーナー一族を10年以上担当し、約20億円の資産をお預かりしました。相続対策として不動産の組み替えと自社株の生前贈与をご提案し、実行いただきました。(記入例)
地域・業種・年代・資産額・案件の中身が1文にそろっています。同じ地域の同業者なら候補は数世帯に絞られ、面接官が知っている先の可能性もあります。実績の説得力より先に、顧客の情報を外に出す人だという印象が残ります。
【営業対象】個人富裕層32世帯(事業オーナー、医療・士業、不動産オーナー、上場企業役員の4分類)。決裁には本人のほか配偶者・後継者・顧問税理士が関与(記入例)
・預かり資産 期末128億円、1世帯あたり平均4.0億円。資産帯別は1億〜5億未満20世帯(小計36億円)/5億〜10億未満8世帯(小計48億円)/10億以上4世帯(小計44億円)(記入例)
・相続・事業承継の提案 年14件、うち実行6件(42.9%)。内訳は自社株・事業承継2件、不動産の組み替え2件、保険を用いた納税資金の準備2件(記入例)
顧客は4つの分類名と世帯数に、金額は帯ごとの小計になっています。案件も種別と件数だけで、どの世帯の話かは復元できません。それでいて「10億円以上を4世帯」「承継の実行を年6件」という規模と難度は、そのまま伝わります(いずれも記入例)。
紹介で増えた顧客は、誰の実績として書けるか
紹介を受けた件数ではなく、受けてから取引が始まるまでの自分の行動を数字にします。富裕層営業の新規は、その大半が既存顧客・提携士業・社内の他部門からの紹介で入ってきます。紹介の件数だけを書くと、店舗の看板や前任者が築いた関係の数に見えます。逆に紹介であることを隠して「新規開拓4世帯」(記入例)とだけ書くと、面接で経路を聞かれたときに話が細くなります。書くべきは経路と、その経路を自分がどう扱ったかです。
| 紹介の経路 | 書ける行(記入例) | 帰属の注意 |
|---|---|---|
| 既存顧客からの紹介 | 紹介7件 → 面談5件 → 取引開始2世帯 | 紹介が出る状態をつくった面談頻度を同じ節に置く |
| 提携士業からの紹介 | 提携先8先・紹介5件 → 面談3件 → 取引開始1世帯 | 提携先を増やした活動は件数で別行にする |
| 社内の他部門・他拠点からの引き継ぎ | 担当移管 1世帯(1.2億円) | 開拓ではないと分かる語で書く。資金純増にも入れない |
| 前任者から引き継いだ担当世帯 | 期首30世帯(前任者からの引き継ぎを含む)のうち継続28世帯(93.3%) | 残高そのものは自分の成果に数えず、継続率と純増で示す |
| 一族・関係法人への広がり | 既存1世帯から後継者世代・資産管理会社の2件へ取引拡大 | 世帯単位で数え、同じ一族だと分かる書き方にしない |
| 架電・訪問による自己開拓 | 該当がなければ「行っていない」と1行 | 行っていない活動を足さない。経路の正直さが評価される |
紹介を実績にするときの中心は、受け取った件数と取引開始の間にある2つの率です。記入例では紹介12件のうち面談まで進んだのが8件(66.7%)、取引開始まで至ったのが3世帯(紹介の25.0%、面談の37.5%)となっています(記入例)。紹介された相手は、担当者を試す立場から入ってくるため、会ってもらえるかどうかが最初の関門になります。面談化率と取引開始率を書けば、紹介をもらう力ではなく紹介を活かす力を示せます。件数が1桁でも率は成立するので、母数の小ささは問題になりません。
紹介元を増やす活動も、別の行として数字にできます。提携先8先のうち年内に紹介の往来があったのは5先(記入例)という書き方をすると、名刺交換だけの関係と実際に案件が動く関係が区別できます。提携先との勉強会や情報提供の回数を添えるなら、その回数が紹介件数につながった経路まで1行でつなぎます。士業側から見れば顧客を預ける相手を選ぶ判断なので、往来の実績があること自体が信用の証明になります。
前任者から引き継いだ世帯と、自分が受けた紹介を同じ行に混ぜないことが、この職種でいちばん多い書き損じです。引き継ぎは期首の担当世帯数として書き、そこから継続率と資金純増で自分の仕事を示します。担当が複数人で付く体制や、拠点全体の残高しか手元にない場合の切り出し方はチーム実績しかない営業の職務経歴書にまとめています。銀行の法人渉外から資産家担当へ移った経歴で、法人取引と個人の資産の両方を担当していた場合は、法人側の実績を銀行法人営業(渉外)の職務経歴書の型で別に書くと、2つの仕事が混ざりません。
お客様からのご紹介を多数いただき、新規のお取引につなげました。税理士の先生方とも良好な関係を築いています。(記入例)
「多数」に数がなく、紹介から取引までの間に自分が何をしたのかも書かれていません。良好な関係という表現は、面談も紹介も無い状態でも書けてしまいます。
・紹介 年12件(既存顧客7件・提携士業5件)→ 面談8件(66.7%)→ 取引開始3世帯(紹介の25.0%、面談の37.5%)(記入例)
・新規4世帯の内訳:紹介経由3世帯(社外資金3.6億円)/社内他部門からの担当移管1世帯(1.2億円)(記入例)
・提携先8先(税理士法人5・弁護士法人2・不動産会社1)のうち、年内に紹介の往来があったのは5先(記入例)
経路が3種類に割れ、紹介を受けてからの2つの率が示されています。社内移管を開拓と分けているため、数字を大きく見せていないことも伝わります。提携先の実働数まであるので、関係づくりの深さが件数で読めます(いずれも記入例)。
外商・プライベートバンカー・M&A事業承継は、何を足すか
本記事の型(預かり資産と資金純増・世帯数と継続年数・紹介の経路)に、業態固有の指標を1つだけ足します。富裕層を相手にする仕事は業態ごとに売っているものが違いますが、変わるのは「何を成果と呼ぶか」の1点です。足す1指標を先に決めてから、記入例の【実績・成果】の2行目に差し込むのが早い手順になります。次の表のうち、金融機関のプライベートバンカーの行以外は、前半の完成記入例とは別の担当者を想定した数字です(いずれも記入例)。
| 業態 | 足す1指標 | 書き方(記入例) |
|---|---|---|
| 百貨店外商 | 担当顧客の年間購買額 | 担当180世帯・年間購買額2億7,000万円(1世帯平均150万円)、催事の来場率 |
| 金融機関のプライベートバンカー | 資金純増と担当収益 | 資金純増8.0億円、担当収益8,400万円(期中平均残高122億円に対し0.69%) |
| M&A・事業承継の仲介 | フェーズ別の件数と成約手数料 | 持ち込み48件 → 提案24件 → 契約12件 → 成約4件(契約の33.3%)、成約手数料1億2,000万円 |
| 高額商材(宝飾・美術・高級車など) | 客単価とリピート率 | 年間販売額1億8,000万円・成約72件(客単価250万円)、既存顧客の再購入率 |
| 資産管理会社・不動産の組み替え | 取り扱い件数と保有期間 | 組み替えの提案9件・実行4件、実行までの平均9か月 |
| オーナー向け法人保険・退職金設計 | 設計件数と決裁関与者 | 設計提案12件・成立5件、決裁に顧問税理士が関与した案件9件 |
百貨店外商は、金融の指標がそのまま使えない代表です。預かり資産に相当するのは年間購買額で、担当世帯数は金融より1桁多くなります。記入例の180世帯・年間購買額2億7,000万円は、1世帯あたり150万円という平均が出る形にそろえています(記入例)。外商で書き分けが要るのは、店頭で完結する販売と、訪問・催事で動く売上です。催事の売上は店舗の企画力に乗っている部分が大きいので、自分の担当世帯の来場数と購買額を分けて書くと、企画に乗っただけではないことが伝わります。品目別の売上や顧客ごとの購買履歴は、金融の銘柄と同じく書かない側の情報です。
M&A・事業承継の仲介は、1件の期間が長く、途中で止まる案件が多いのが特徴です。成約件数だけを書くと年に数件にしかならないため、持ち込みから成約までのフェーズを並べます。記入例では持ち込み48件から提案24件、アドバイザリー契約12件、成約4件(契約の33.3%)と落ちていき、成約手数料は合計1億2,000万円・1件平均3,000万円です(記入例)。売手側と買手側のどちらに付いたか、譲渡企業の業種と規模帯(従業員数・売上規模)までは書けますが、企業名と譲渡価額は書けません。M&Aや大型の承継案件で商談が1年以上に及ぶ場合の期間の示し方は、金額の大きい法人案件に共通する論点としてアカウントマネージャー・エンタープライズ営業の職務経歴書にまとめています。
資産の組み替えで収益不動産を売買した経験は、金融の書式に載せると内容が消えます。物件の取得・売却に関与した件数と、その目的(納税資金の確保、収益性の改善、共有名義の整理)を書き、物件の所在地・規模・価格は落とします。投資家に収益物件を販売する側の仕事として応募するなら、利回りと融資付けを主指標にする投資用不動産営業の職務経歴書の型に組み替えるほうが読まれます。業態をまたいで応募する場合は、預かり資産と購買額のどちらを主軸に置くかを応募先に合わせて入れ替え、もう一方は補足の1行に落とします。
足す指標を1つに絞るのは、読み手が業態内の指標をいくつも読み解けないからです。資金純増も成約手数料も客単価も、外から見れば説明が要る言葉です。初出に括弧で定義を添えたうえで1つだけを主役に置けば、その業態の物差しで働いてきた人だと伝わります。2つ、3つと重ねると、どれも定義の説明で終わり、成果そのものが読めなくなります。
よくある質問
預かり資産の金額を会社が非開示にしていて、書けません。
金額を落とし、世帯数・継続年数・件数・率だけで組み立てます。「個人富裕層32世帯を専任で担当(1世帯あたりの資産は1億円以上、うち4世帯は10億円以上)」「期首30世帯のうち継続28世帯(継続率93.3%)」「紹介12件→面談8件→取引開始3世帯」(いずれも記入例)と並べれば、金額が1つも無くても規模と難度は伝わります。目標に対する達成率だけが開示されている場合は、達成率と前年差(+5.0ポイントなど・記入例)を書きます。金額を伏せた理由を1行添えておくと、書けない事情があったことが読み手に伝わります。何を伏せるかの線引きは、守秘の節に置いた表と同じ考え方で決めます。
相場が下がって預かり資産が減った年度は、どう書きますか。
残高の減少をそのまま書いたうえで、資金純増と継続率を同じ行に並べます。「預かり資産 期末116億円(期首128億円)。うち市場評価による減少は14億円で、資金純増は+2億円」(記入例)と書けば、預かった金額は増やしたが相場で目減りしたという構造が読めます。相場が悪い年は解約と他社移管が増えるので、継続率が下がっていなければそれ自体が成果です。「離脱1世帯・継続率96.9%(期首32世帯のうち継続31世帯)」(記入例)のような行を足します。相場が理由の増減は、金額の横に必ず市場評価分を並べて書きます。
富裕層の担当になって日が浅く、自分の数字がほとんどありません。
担当した世帯数と、引き継ぎ後に自分が動かした部分だけを切り出します。「○○○○年○月に前任者から18世帯(預かり資産62億円)を引き継ぎ、着任後10か月で全世帯と初回面談を完了。追加預入3.4億円、離脱0世帯」(記入例)のように、引き継ぎ日を起点にした期間で区切ると、短い担当歴でも自分の仕事が独立して読めます。着任直後は残高より接点の数が実績になるので、面談件数・提案件数・提携先への訪問件数を先に埋めます。数字が手元に残っていない場合の復元の手順は実績が数字にできない職務経歴書にまとめています。
社内で使っていた顧客区分の呼び名は、そのまま書けますか。
そのままでは伝わらないため、金額の基準に置き換えます。会社ごとに「上位顧客」「特別担当先」「第一グループ」といった区分名がありますが、外から見ると何の基準か分かりません。「金融資産1億円以上の個人(社内区分では上位顧客に相当)」(記入例)のように、一般的な金額基準を先に書き、社内の呼び名は括弧に落とします。区分の基準そのものが社外秘なら、呼び名を消して金額基準だけを残します。社内の指標名や独自の呼称を一般語へ直す手順は社内用語・社内KPIを翻訳する職務経歴書で扱っています。
顧客との会食や私的な付き合いも、実績として書けますか。
行為そのものは書かず、結果として起きたことを数字にします。会食の回数を書いても、読み手には接待費を使った人としか読めません。書けるのは、関係が続いた年数(平均11.2年)、紹介が出た件数(年12件)、一族の次世代へ取引が広がった件数(記入例)といった、関係の深さが結果に出た行です。趣味や家族の話題への対応力を伝えたい場合も、「後継者世代との面談を年24件実施し、うち2世帯で新たに口座開設」(記入例)のように、誰と何回会って何が起きたかに置き換えます。私的な交流の中身を書くことは、顧客の私生活を書くことと同じなので避けます。
異業種の富裕層向けサービス(不動産・保険・物販)へ応募するとき、何を前に出しますか。
商品知識ではなく、継続年数と紹介の連鎖を前に出します。扱う商品が変わっても、数十世帯を長く担当し、紹介で次の世帯へつながる構造は同じです。「担当32世帯・取引継続年数 平均11.2年」「紹介12件→取引開始3世帯」「提携先8先のうち往来5先」(いずれも記入例)は、業態が変わってもそのまま読まれる行です。加えて、決裁に配偶者・後継者・顧問税理士が関与する商談を進めた経験は、関係者が多い高額商材ではどこでも必要になります。商品固有の知識は「その商品の知識」ではなく「顧客の資産全体を見て使い分けた経験」として書き直すと、扱う商材が変わっても再現できる経験として読まれます。
参照した情報
- ハローワークインターネットサービス「履歴書・職務経歴書の書き方」 — 確認日 2026年9月6日
運営 オルグロー株式会社(運営会社)。この記事は、当社が運営する履歴書・職務経歴書作成ツール「営業の履歴書作成ツール」の編集部が制作し、当社が編集責任を負います。外部ライターへの委託や、他社記事の転載はしていません。
記事内の数値について 売上・件数・達成率・順位などの数値はすべて記入例です。当社サービスの実績や、特定の個人の経歴ではありません。
制作方法 構成と下書きに生成AIを使い、当社の担当者が数値の検算、入力フォームの欄名・並びとの整合、参照情報との照合を行っています。詳しくは編集方針に記載しています。
更新 公開 /最終更新 。記入例・表・結論を変えたときだけ最終更新日を上げています。募集要項に指定がある場合は、そちらが優先されます。