50代の営業の職務経歴書は30年を全部書く?直近12年を厚くして2枚に
この記事の結論
50代以上の営業の職務経歴書は、30年ぶんを同じ密度で並べず、直近12年を厚く、それ以前を要約と一覧に落としてA4 2枚に収めます。役職定年や早期退職のあとに応募する場合は、管理職としての管掌規模より先に、いま自分の口座で出している数字を置きます。担当12社・売上4億2,000万円(目標4億円・達成率105.0%)、見積96件から受注60件(受注率62.5%)(記入例)のように、プレイヤーとして再現できる実績を先頭に並べます。
この記事は30年ぶんの営業経歴をA4 2枚に圧縮し、役職を離れたあとの個人実績で書き切ることを決めきるためのものです。職務要約から自己PRまでの全体の型、実績指標の対応表、数字で示せる実績がない場合の書き方、社名や売上を書いてよいかの判断は、営業職の職務経歴書にまとめています。様式そのものを探している方は、そちらの入力フォームからそのまま作れます。
入力フォームへ50代以上の営業とは(職務経歴書での扱い)
50代以上の営業とは、営業職としての経験が25年を超え、担当者・主任・課長・支店長といった役割の変化を1つ以上くぐってきた人を指します。書類で手が止まる理由は経験の少なさではなく、その逆です。書けることが多すぎて、担当した会社・商材・役職をひととおり書き並べると3枚を超え、しかも読み終えたときに「いま何ができる人か」が残らないところにあります。
本記事は、営業経験が長く、役職定年・早期退職優遇制度への応募・定年後の再雇用といった役割の変化を経て応募する場面を対象にします。営業歴15〜25年で管理職の途中にいる場合は40代の営業の職務経歴書、在籍社数が3社以上あって社ごとの束ね方に困っている場合は転職回数が多い営業の職務経歴書で扱います。履歴書と職務経歴書の役割の違いは営業職の履歴書と職務経歴書の違いにまとめています。
採用側がこの層の書類を読むときの関心は、経験の量ではなく3つに絞られます。着任してすぐ担当を持てるか、いまの現場のやり方に合わせられるか、既にいるメンバーとどう並ぶか。30年ぶんの経歴を圧縮するのは、紙を節約するためではなく、この3つに答える行だけを表に出すためです。
なお、労働者の募集・採用については、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の第9条で、年齢にかかわりなく均等な機会を与えることが事業主に求められています。定年年齢を上限とする場合など、省令で定める例外もあります(2026年9月時点)。条文はe-Gov法令検索の労働施策総合推進法で確認できます。制度側の定めは記入例の数字とは別のものとして扱い、書類には自分の職務と実績だけを書きます。
職務経歴書の完成記入例(営業歴30年・役職定年後)
先に完成形を示します。資材メーカー1社に30年在籍し、担当者から支店長までを経験して、役職定年により管理職の任を離れたあと、担当部長として大口顧客を直接持っている想定です。数値はすべて記入例で、期間の合計と各行の掛け算が合うようにそろえています。
記入例
職務要約
建築資材メーカー1社で30年0か月、建設・住宅分野の法人営業に従事してきました(記入例)。担当者としての新規開拓と既存深耕から、課長・支店長としての組織運営までを経験しています。○○○○年○月に会社の制度により管理職の任を離れ、現在は営業本部 担当部長として大口顧客12社を自分の担当として持ち、直近1年は担当売上4億2,000万円(目標4億円・達成率105.0%)、見積96件から受注60件(受注率62.5%)です(記入例)。支店長として在任した10年0か月では、営業14名・営業事務4名の支店を管掌し、支店売上を12億円から18億円へ伸ばしました(記入例)。次の職場では役職にはこだわらず、担当を持つ営業として着任し、既存顧客の引き継ぎと新規開拓を並行して受け持つことを希望しています。
職務経歴
〇〇〇〇株式会社(建築資材メーカー・従業員約1,600名) ○○○○年○月〜現在(30年0か月)(記入例)
[直近]本社 営業本部 担当部長 ○○○○年○月〜現在(2年0か月)(記入例)
- 【所属】営業本部 担当部長(○○○○年○月〜。会社の役職定年制度により管理職の任を離れ、大口顧客の直接担当に異動)(記入例)
- 【営業対象】ゼネコン・ハウスメーカー・建材商社12社の資材購買部門と設計部門(記入例)
- 【商材】建築用の副資材(金物・下地材・防水材。1件30万〜3,000万円、年間契約と個別受注の併用)(記入例)
- 【営業手法】担当12社への定期訪問と、購買・設計の双方への提案。年次の価格改定交渉、納期調整、若手・中堅への同行を併走(記入例)
- 【実績・成果】(直近1年・すべて記入例)
- 担当12社 売上4億2,000万円(目標4億円・達成率105.0%)(記入例)
- 内訳:期首から担当の既存9社 3億6,000万円(1社平均4,000万円)/期中に取引を開始した新規3社 6,000万円(1社平均2,000万円)(記入例)
- 既存9社は前年3億3,000万円から3億6,000万円へ(前年比109.1%)(記入例)
- 期首の担当10社のうち9社と取引継続(継続率90.0%。1社は先方の生産終了により取引終了)(記入例)
- 訪問216件(月平均18件)、見積提出96件 → 受注60件(受注率62.5%)(記入例)
- 新規3社の経路:業界団体の分科会・展示会での接点2社、既存顧客からの紹介1社(記入例)
- 育成:営業6名に同行96件(1名あたり平均16件)、6名中5名が年度目標を達成。見積根拠・投資回収・保守条件の提案書の型を3種作成し、営業部18名が使用(記入例)
[直近]〇〇支店 支店長 ○○○○年○月〜○○○○年○月(10年0か月)(記入例)
- 【所属】〇〇支店 支店長(営業14名・営業事務4名の計18名を管掌/担当エリア6県)(記入例)
- 【営業対象】エリア内のゼネコン・工務店・建材商社(取引先約240社)(記入例)
- 【商材】建築用の副資材(同上)(記入例)
- 【営業手法】支店の予算配分と案件レビュー、大口先への同行、採用と教育、在庫と与信の管理(記入例)
- 【実績・成果】(すべて記入例)
- 管掌した支店売上 最終年度18億円(目標17億5,000万円・達成率102.9%)。営業14名で1名あたり平均約1億2,857万円(記入例)
- 在任10年0か月で支店売上 12億円 → 18億円(1.5倍)(記入例)
- 在任中に営業9名を採用・育成し、うち4名が主任・課長へ昇格(記入例)
[要約]本社 第一営業部 課長 ○○○○年○月〜○○○○年○月(7年0か月)(記入例)
- 大手ゼネコン・ハウスメーカー向けの営業課を担当(部下6名)。課の売上 最終年度8億4,000万円(目標8億円・達成率105.0%)(記入例)
- 設計事務所への技術提案を課の標準工程に組み込み、指定材としての採用を年12件から年28件へ(記入例)
[一覧]〇〇支店 営業課(担当者・主任) ○○○○年○月〜○○○○年○月(11年0か月)(記入例)
- 主任(5年0か月):建材商社28社を担当。最終年度 担当売上2億2,400万円(1社平均800万円)(記入例)
- 担当者(6年0か月):工務店・小規模建設会社60社を担当。最終年度 担当売上1億8,000万円(1社平均300万円)(記入例)
活かせる経験・知識・スキル
- 建設・住宅分野の法人営業(通算30年0か月):購買・設計・施工の3部門に分けて提案を組み立て、指定材としての採用から個別受注までを一貫して担当(記入例)
- 大口顧客の維持(担当12社・期首10社に対する継続率90.0%・最長の取引22年/期首から担当の9社は平均12年)(記入例)
- プレイヤーとしての直近実績(担当売上4億2,000万円・達成率105.0%・受注率62.5%・訪問216件)(記入例)
- 組織運営(通算17年0か月=課長7年0か月+支店長10年0か月):最大18名、採用9名・昇格4名(記入例)
- 後進育成:同行96件/年、6名中5名が年度目標を達成、提案書の型3種を営業部18名へ展開(記入例)
- 業界団体・展示会:〇〇工業会の〇〇分科会に8年在籍、年次展示会の出展を6回担当(記入例)
- 実務:見積作成と原価計算、与信管理、在庫・納期調整、SFAでの案件登録と月次の受注予測
資格
- 普通自動車第一種運転免許(○○○○年○月 取得)
記入例では、4つの期間を足すと2年0か月+10年0か月+7年0か月+11年0か月=30年0か月になり、会社名の行に書いた在籍30年0か月と一致します。「活かせる経験」の組織運営17年0か月も、課長7年0か月と支店長10年0か月の和です。担当12社の売上も、既存9社×4,000万円=3億6,000万円と新規3社×2,000万円=6,000万円を足して4億2,000万円になり、見積96件×62.5%=60件も行の中で確かめられます(いずれも記入例)。経歴が長い書類ほど数字の行が増えるため、年数や役職より先に、足し算が合っているかどうかが読み手の目に入ります。
職務経歴書は、履歴書では書ききれない具体的な職務内容と実績を伝える書類だと、ハローワークインターネットサービスの「履歴書・職務経歴書の書き方」でも位置づけられています。経験が長い人にとっての「具体的」は、30年を均等に書くことではなく、応募先が再現してほしい期間を厚く、それ以外を薄く配分することです。職務要約そのものの組み立て方と、A4何枚に収めるかの一般的な目安は営業職の職務経歴書の書き方にまとめています。
記入例を入力フォームに落とすときの対応は次のとおりです。様式は「逆編年式(新しい順)」を選び、在籍が1社なら「職歴」は1つだけ追加して会社名・入社年月・在籍中のチェックを入れます。「業務内容と実績・成果」の欄は1つで、【所属】【営業対象】【商材】【営業手法】【実績・成果】の5ブロックを続けて書く形です。役割が4つある場合は、この5ブロックを役割ごとに繰り返し、[直近][要約][一覧]の見出し行で区切ります。会社を分けて登録すると、履歴書の職歴欄と在籍社数が食い違うため分けません。
- 直近の2つの役割:5ブロックをすべて書き、【実績・成果】に年度実績・内訳・継続率・受注率を並べます。
- その前の役割:5ブロックを立てず、部下数・担当範囲・そろえた達成率だけを2行で残します。
- それ以前:役割名と期間、担当社数、最終年度の担当売上だけを各1行にします。
- 希望する働き方(雇用形態・担当を持つ意思)は、職務経歴の欄ではなく「職務要約」の最後の1行に置きます。
30年ぶんを全部書くと3枚を超える。何を残して何を1行にするか?
期間を「詳述する期間」「要約する期間」「一覧にする期間」の3つに分け、詳述するのは直近の2つの役割だけにします。役割が変わるたびに同じ密度で書き足していくと、30年で4〜6ブロックになり、それだけで3枚を超えます。削るのは行の中身であって、期間そのものではありません。期間を丸ごと省くと、履歴書の職歴欄と在籍期間が食い違い、経歴が確認できない書類になります。
| 区分 | 記入例での該当 | 残す項目 | 行数の目安 |
|---|---|---|---|
| 詳述する期間(直近2役) | 担当部長2年0か月+支店長10年0か月=12年0か月 | 所属・営業対象・商材・営業手法・実績3〜7行 | 各10〜16行 |
| 要約する期間(その前1役) | 課長7年0か月 | 部下数・担当範囲・達成率・特筆する1施策 | 2〜4行 |
| 一覧にする期間(それ以前) | 主任5年0か月+担当者6年0か月=11年0か月 | 役割名・期間・担当社数・最終年度の担当売上 | 各1行 |
| 束ねて別立てにするもの | 通算年数・組織運営・育成・業界団体 | 「活かせる経験・知識・スキル」に1行1項目 | 5〜8行 |
詳述する期間の切り方は年数ではなく役割の数で決めます。直近の役割が2年しかなくても、その前の役割が10年あっても、表に出すのは2つまでです。3つ目を詳述に含めた瞬間に、【営業対象】と【商材】がもう一組増え、2枚に収まらなくなります。役割の変わり目が5年以内に3回ある場合だけ、直近3役を詳述にして、代わりに一覧期間の行を各1行に落とします。
一覧にする期間で落としてよいのは、営業手法の説明と部署名の変遷です。担当社数と最終年度の担当売上は残します。この2つは商材の単価帯と担当の重さを示す情報で、応募先が同じ帯なら20年前の経験でもそのまま効きます。逆に「訪問件数を増やして目標を達成した」といった当時の工夫は、いま再現する話ではないため、詳述期間に同じ趣旨の行があるなら重複です。
期間の足し算が在籍年数と一致するか確かめる
記入例の三分割は、12年0か月+7年0か月+11年0か月=30年0か月で、会社名の行に書いた在籍30年0か月と一致します(記入例)。ここで「大口顧客の担当 通算12年0か月」という4つ目の見出しを職務経歴の中に足すと、担当部長2年0か月と支店長10年0か月が二重に数えられ、4つの見出しの合計が42年0か月となって在籍年数を超えます(記入例)。会社をまたぐ経験や役割をまたぐ経験を束ねたい場合は、職務経歴ではなく「活かせる経験・知識・スキル」に移します。
【職務経歴】○○○○年○月 入社。〇〇支店 営業課に配属。○○○○年○月 主任に昇格。○○○○年○月 本社 第一営業部へ異動。○○○○年○月 課長に昇格。○○○○年○月 〇〇支店 支店長に着任。……を年表として20行、各役割の業務内容を各8行(記入例)。
昇格と異動の年表は、履歴書の職歴欄で足ります。職務経歴書で同じ年表を繰り返すと、3枚のうち1枚が「いつ何になったか」で埋まり、いま何ができるかを書く行が残りません。
在籍1社30年0か月。[直近]担当部長2年0か月と支店長10年0か月に5ブロックを立てて詳述、[要約]課長7年0か月は2行、[一覧]主任5年0か月・担当者6年0か月は各1行。通算の組織運営17年0か月と育成の実績は「活かせる経験・知識・スキル」に移す(すべて記入例)。
在籍期間は会社名の行と各役割の見出しで確認でき、応募先が知りたい直近12年0か月は詳細で読め、30年で積み上がったものは束で1行にまとまります(いずれも記入例)。A4 2枚に収まり、経歴の長さが読みにくさに変わりません。
役職定年や早期退職のあと、何を先頭に置くか?
管理職としての管掌規模ではなく、いま自分の担当として持っている顧客の数字を先頭に置きます。役職を離れたあとに応募する人の書類で起こりやすいのは、支店長時代の18億円が1行目にあり、直近2年0か月の担当実績が最後に小さく載っている並びです(いずれも記入例)。この並びだと、読み手は「管理職として来る人」と受け取り、担当を持てるかどうかの判断材料を探して読み返すことになります。
| 変化 | 書く場所 | 書き方(記入例) | 書かないこと |
|---|---|---|---|
| 役職定年で管理職の任を離れた | 職務経歴の【所属】 | 営業本部 担当部長(○○○○年○月〜。会社の役職定年制度により管理職の任を離れ、大口顧客の直接担当に異動) | 「降格」「外された」などの評価語 |
| 役職名が担当部長・エキスパート等に変わった | 職務経歴の【所属】と会社名の行 | 社内の呼称をそのまま書き、括弧で職務の範囲を添える | 肩書だけを大きく見せる書き方 |
| 早期退職優遇制度に応募して退職 | 職務経歴書には書かない | 退職の事実と時期は営業職の履歴書の職歴欄で扱う | 職務経歴書の中での退職理由の説明 |
| 定年後に再雇用(嘱託)で在籍中 | 職務経歴の【所属】 | 〇〇部 嘱託社員(○○○○年○月〜)と雇用形態を明記し、担当範囲を続ける | 雇用形態だけを書いて職務を省くこと |
| 出向・転籍・親会社への復帰 | 職務経歴の会社名の行 | 在籍会社と勤務先が違う期間は、両方の名称と期間を書く(書き分けは社名変更・合併・出向・転籍の職務経歴書) | どちらか一方だけの記載 |
役職定年を書くときの原則は、制度の名前で書いて評価の語で書かないことです。「会社の役職定年制度により」と1行添えれば、本人の成績によるものではないことがそのまま伝わります。制度がない会社で本人の希望により担当に戻った場合は、「本人希望により大口顧客の直接担当へ」と書きます。いずれの場合も、その行のすぐ下に直近の担当実績が来る並びにします。昇進・降格・異動そのものの書き分けは部署異動・昇進・降格・兼務のある職務経歴書にまとめています。
管理職期の数字は、消さずに帰属を明示して残します。記入例の支店売上18億円は、営業14名・営業事務4名の18名で出した数字であり、自分1人の数字ではありません。「管掌した支店売上18億円(営業14名・営業事務4名/営業1名あたり平均約1億2,857万円)」(記入例)と管掌であることを書き、そのうえで自分の口座の4億2,000万円を別行に置けば、両方が正しく読めます。組織の数字と個人の数字の切り分け方はチーム実績・個人の貢献が分けられないときの職務経歴書、管理職としての管掌規模・部下数の書き方は営業マネージャー・管理職の職務経歴書で扱います。
プレイヤーとして再現できることを示す数字は4つあります。担当している顧客の数、その担当売上と目標に対する達成率、見積から受注までの率、そして訪問や商談の実数です。記入例では、担当12社、担当売上4億2,000万円(目標4億円・達成率105.0%)、受注率62.5%、訪問216件の4組を並べています(記入例)。管理職の期間が長い人ほど、この4つが古い数字しか残っていないことがあります。その場合は、直近で自分が最後まで担当した案件を数え、「大口2社の年次価格改定交渉を直接担当(○○○○年度・○○○○年度)」(記入例)のように、件数と時期で書きます。
〇〇支店 支店長として18名の組織を率い、支店売上18億円を達成しました。マネジメント歴17年、部下の育成にも力を入れてきました(記入例)。
管掌の数字だけが並び、いま自分で担当を持てるかが読めません。18億円が何人で出した数字かも書かれていないため、金額の大きさが判断材料になりません。
現在は担当部長として大口顧客12社を直接担当。直近1年は担当売上4億2,000万円(目標4億円・達成率105.0%)、訪問216件、見積96件から受注60件(受注率62.5%)。あわせて営業6名に同行96件。前職務は〇〇支店 支店長(10年0か月)として営業14名・営業事務4名を管掌し、支店売上18億円(営業1名あたり平均約1億2,857万円)(すべて記入例)。
1行目で担当を持つ営業としての現在地が読め、2行目以降で組織を見た経験が補足として乗ります。管掌と個人の数字が分かれているので、どちらの規模も過大に受け取られません。
人脈・業界知識・後進育成は、どう数字にするか?
人脈は「持ち込める顧客」ではなく「接点をつくる場と、そこから生まれた件数」に、業界知識は年数ではなく判断できる範囲に、育成は同行件数と到達した人数に置き換えます。この3つは50代以上の書類によく並ぶ言葉ですが、言葉のまま置くと読み飛ばされます。読み飛ばされる理由は謙遜が足りないからではなく、検証できる形になっていないからです。
| 書きがちな表現 | なぜ読み飛ばされるか | 置き換えた書き方(記入例) |
|---|---|---|
| 業界に太いパイプがあります | 前職顧客の持ち込みを示唆する。範囲も不明 | 〇〇工業会の〇〇分科会に8年在籍し、年次展示会の出展を6回担当。直近1年の新規3社のうち2社は、この場での接点から取引開始 |
| 30年の業界経験があります | 年数は何を判断できるかを示さない | 建築資材の調達経路4系統(設計事務所・ゼネコン・建材商社・工務店)ごとに、見積から納入までの流れと決裁の位置を説明できる |
| 顧客との信頼関係を築いてきました | 相手側の評価であり、書類では確かめられない | 期首の担当10社のうち9社と取引継続(継続率90.0%)。期首から担当の9社は最長22年・平均12年の取引 |
| 若手の育成に力を入れてきました | 何人に何をしたかが無い | 営業6名に同行96件(1名あたり平均16件)、6名中5名が年度目標を達成 |
| 後進に技術を伝えてきました | 伝えた中身が残らない | 見積根拠の分解・投資回収の試算・保守条件の比較の3種の提案書の型を作成し、営業部18名が使用 |
| 豊富な経験を活かせます | 応募先で何をするかが書かれていない | 着任後は既存顧客の引き継ぎと新規開拓を並行して担当し、初年度は担当10社前後を想定 |
人脈を書くときに越えてはいけない線が1つあります。前職の顧客名簿や見込み客リストを持ち込めることを、書類でも面接でもほのめかさないことです。「前職の取引先○社との関係を活かせます」という一文は、採用側には「自社を辞めるときも同じことをする人」と読まれます。書くのは、接点が生まれる場(業界団体・展示会・講習会・既存顧客からの紹介)と、その場から生まれた取引の件数までにとどめます。取引先は社名を出さず、業種と企業規模で書きます。
業界知識は、知っている量ではなく「聞かれたときに判断できる範囲」で書きます。記入例の「調達経路4系統ごとに見積から納入までの流れと決裁の位置を説明できる」は、初日から使える知識の輪郭を示しています(記入例)。相場観・規格・法改正の履歴・主要な競合の得意分野など、応募先が新人を採ると身につくまでに年単位かかるものを3つ選び、それぞれ1行にします。社内でしか通じない呼び名が混じるときは、定義を添えて一般語に置き換えます。
育成の実績は、いま管理職でなくても書けます。同行した人数と件数、その人たちがどこまで到達したか、残した型が何人に使われているかの3点です。記入例では6名・96件・5名が目標達成・型3種を18名が使用としています(記入例)。ここで「行動量を教えた」と書きたくなりますが、行動量そのものの設計と数え方は若手側の論点で、第二新卒・20代の営業の職務経歴書で扱っています。この記事で書くのは、教えた側に残った数字です。
30年培った業界知識と人脈、後進の育成経験を活かして、貴社の発展に貢献したいと考えております(記入例)。
3つの資産が名前だけで並び、どれも大きさが分かりません。「貢献したい」は意欲の表明で、職務経歴書ではなく志望動機の役割です。
〇〇工業会の〇〇分科会に8年在籍、年次展示会の出展を6回担当。直近1年の新規3社のうち2社はこの場での接点から取引開始(残り1社は既存顧客からの紹介)。調達経路4系統ごとに見積から納入までの流れを説明可能。営業6名に同行96件、6名中5名が年度目標を達成し、提案書の型3種を営業部18名へ展開(すべて記入例)。
人脈は場と件数に、業界知識は説明できる範囲に、育成は人数と件数と到達点になりました。どれも応募先で再現できる形なので、持ち込みを疑われる余地もありません。
嘱託・業務委託・週3日での応募は、書類をどう変えるか?
職務経歴の書き方は変えず、職務要約の最後に「希望する働き方」の1〜2行を足します。雇用形態が正社員でない応募では、稼働できる日数・時間と、担当を持つ意思があるかどうかが、実績と同じくらい早く知りたい情報になります。ただし書くのは労働条件の希望までで、そう希望する理由(健康状態・家族の事情など)は書きません。
| 応募する働き方 | 足す1行(記入例) | あわせて数字にすること |
|---|---|---|
| 正社員(担当を持つ営業) | 役職にはこだわらず、担当を持つ営業として着任することを希望します | 直近1年の担当社数・担当売上・受注率 |
| 嘱託・再雇用 | 嘱託(週5日・フルタイム)での勤務を希望します | 引き継ぎ可能な担当数と、立ち上がりまでの想定月数 |
| 契約社員 | 契約社員(期間の定めのある雇用)での勤務も可能です | これまでの非正規雇用での営業実績(あれば) |
| 業務委託・顧問 | 業務委託(月8日・稼働64時間程度)での受託も可能です | 受託する業務の範囲(同行・提案書の型づくり・与信の確認など) |
| 週3日など短時間 | 週3日(火・水・木/1日7時間)での勤務を希望します | 稼働日に訪問できる件数の目安 |
月8日・稼働64時間は、1日8時間×8日で計算した数字です(記入例)。業務委託で応募するときは、日数だけでなく時間まで書くと、報酬の話が具体化しやすくなります。契約社員・派遣・アルバイトとして営業をしてきた期間の書き方は契約社員・アルバイト・派遣の営業経験の職務経歴書、業務委託やフルコミッションでの実績の書き方は業務委託・フリーランス・営業代行の職務経歴書で扱います。
制度の側の話も、時点を添えて押さえておくと求人票が読みやすくなります。高年齢者等の雇用の安定等に関する法律では、65歳までの雇用確保措置(定年の引上げ・継続雇用制度の導入・定年の定めの廃止のいずれか)が事業主の義務とされ、70歳までの就業確保措置は努力義務とされています。就業確保措置には、継続雇用のほか、業務委託契約を締結する制度や社会貢献事業に従事できる制度も含まれるとされています(2026年9月時点)。条文はe-Gov法令検索の高年齢者等の雇用の安定等に関する法律で確認できます。制度側の年齢は記入例の数字とは別のものとして扱い、書類には自分が働ける日数と時間だけを書きます。
希望年収や報酬の額は職務経歴書に書きません。書く場所は履歴書の本人希望記入欄か、応募先が指定する欄です。前職の年収に変動給が含まれていて額の説明が必要な場合の書き方はインセンティブ・歩合込み年収の書き方にまとめています。職務経歴書に「年収は下がっても構いません」と書くと、実績の行より先にその一文が読まれ、条件交渉の材料としてだけ扱われます。
「50代ではありますが」の前置きは、何に置き換えるか?
年齢・体力・健康に触れる一文は、自分からは書きません。代わりに、着任後にできることと、それを支える直近の数字を1行ずつ置きます。長い経歴の書類には「50代ではありますが」「若い方に負けないつもりです」といった前置きが入りがちですが、この一文は書類の中で年齢を最初の話題にしてしまいます。読み手が実績を読む前に、年齢を軸にした比較が始まります。
厚生労働省の公正な採用選考の基本では、応募者の適性・能力に基づいて採用選考を行うこと、本人に責任のない事項や本来自由であるべき事項を採用の判断に用いないことが示されています(2026年9月時点)。応募する側から見れば、選考の基準にならない情報を書類に自分から書き足す必要はない、ということでもあります。家族の状況、健康状態、生活信条は、職務経歴書に書く欄そのものがありません。
| 書きがちな前置き | 読み手が受け取るもの | 置き換えた1行(記入例) |
|---|---|---|
| 50代ではありますが体力には自信があり | 年齢が最初の論点になる | 直近1年の訪問216件(月平均18件)、担当エリアは6県 |
| 年下の上司でも問題ありません | 問題があり得ると自分で示している | 役職にはこだわらず、担当を持つ営業として着任することを希望します |
| 定年まであと数年ですが精一杯働きます | 働ける期間を自分から短く区切っている | 期首から担当の9社は最長22年・平均12年の取引、期首10社に対する継続率90.0% |
| パソコンは苦手ですが努力します | できない範囲が読めず不安が残る | SFAでの案件登録と月次の受注予測、オンライン商談(週2〜3件)を担当業務として実施 |
| 年収は下がっても構いません | 条件交渉の材料としてだけ読まれる | (職務経歴書には書かず、履歴書の本人希望記入欄か応募先の指定欄で扱う) |
| これまでの経験をリセットして一から | 30年の実績を自分で無効化している | 着任後は既存顧客の引き継ぎと新規開拓を並行して担当し、初年度は担当10社前後を想定 |
「年下の上司」への言及は、書かないほうが伝わります。書かずに同じことを示す方法は2つあります。1つは職務要約の末尾に「役職にはこだわらず、担当を持つ営業として」と役割の希望を置くこと。もう1つは、直近の実績を管掌の数字ではなく個人の数字から並べることです。役職を求めていないことは、希望の一文と実績の並び順の2か所から自然に読み取れます。
ツールへの不安も、できないと書くのではなく、使っているものを事実で書きます。SFA・オンライン商談・見積システム・表計算のうち、日常の業務で自分が操作しているものを列挙し、頻度を添えます。「使ったことがない」ものは書かなければよく、書類に書いていないものを面接で聞かれたら、そこで正直に答えれば足ります。書類の役割は、できることの輪郭を示すところまでです。
この年齢での応募となり恐縮ですが、体力・気力ともに衰えておりません。年下の方の指示にも素直に従い、一から学び直す覚悟です。年収も貴社の規定に従います(記入例)。
4つの文がすべて年齢と処遇の話で、職務の情報が1つもありません。「恐縮」「衰えておりません」「一から」は、30年の実績を読む前提を弱くします。
次の職場では役職にはこだわらず、担当を持つ営業として着任し、既存顧客の引き継ぎと新規開拓を並行して受け持つことを希望します。直近1年は担当12社・売上4億2,000万円(目標4億円・達成率105.0%)、訪問216件、見積96件から受注60件(受注率62.5%)です(すべて記入例)。
希望する役割が1文目にあり、その希望を裏づける数字が2文目に来ます。年齢にも処遇にも触れていないのに、担当を持って働く意思と、持てる根拠の両方が伝わります。
よくある質問
早期退職優遇制度に応募して退職しました。職務経歴書に理由を書きますか?
職務経歴書には書きません。書類の中に退職理由の欄を作ると、読み手の関心が実績から離職の経緯へ移ります。退職の事実と時期は営業職の履歴書の職歴欄で扱う情報で、そこでも「一身上の都合により退職」「会社都合により退職」のいずれかの定型で足ります。どちらの表記になるかは会社の制度と離職票の記載によって変わるため、離職票や退職証明書の記載を確認してから履歴書の表記を決めてください。応募の動機として説明したい場合は、志望動機の欄で「これまでの経験をどう使うか」の側から書きます。
30年で扱った商材が10種類を超えます。すべて書きますか?
詳述する期間の【商材】には、直近で実際に扱っているものだけを単価帯つきで書きます。それ以前に扱った商材は、系統でまとめて「活かせる経験・知識・スキル」に1行置きます。「建築用の副資材(金物・下地材・防水材)を通算30年、1件30万〜3,000万円の帯で担当」(記入例)のように、系統名と単価帯があれば、応募先は自社の商材と重なるかを判断できます。10種類を並べると、どれが主力だったのかが読めなくなり、かえって経験の輪郭がぼやけます。
ブランクがあります。直近の数字が3年前のものしかありません。
直近の数字が古い場合は、年度を明記したうえでその実績を書き、離職期間は職務経歴の中で期間として残します。「○○○○年○月〜○○○○年○月(1年6か月) 離職期間」(記入例)と1行置けば、履歴書の職歴欄とも整合します。数字が古いこと自体は隠さず、その代わりに、離職期間中に続けていた業界団体の活動や資格の更新があれば同じ1行に添えます。離職期間の書き方そのものは離職ブランクからの再就職の職務経歴書にまとめています。
定年後の再雇用(嘱託)で在籍しながら応募します。現職はどう書きますか?
職務経歴の【所属】に雇用形態を明記し、そのうえで担当範囲と実績を通常どおり書きます。「〇〇部 嘱託社員(○○○○年○月〜)/担当10社・年間売上○○万円」(記入例)の形です。雇用形態だけを書いて職務を省くと、何をしているのかが読めない期間になります。契約更新の時期が決まっている場合は、会社名の行に「(○○○○年○月まで契約)」と添えると、着任可能な時期の目安として読まれます。
60代での応募です。50代と書き方を変える必要はありますか?
職務経歴書の構造は変わりません。三分割で圧縮し、直近の個人実績を先頭に置く並びは同じです。変わるのは、応募する働き方の選択肢が広がることで、正社員・嘱託・契約社員・業務委託のどれを希望するかを職務要約の末尾に1行置く重みが増します。求人票の側も、雇用形態と契約期間が明示されている募集が増えるため、応募前に募集要項の雇用形態を確認し、希望の一行をそれに合わせて書き分けてください。年齢そのものに触れる一文は、50代と同じく書きません。
参照した情報
- 厚生労働省「公正な採用選考の基本」 — 確認日 2026年9月6日
- ハローワークインターネットサービス「履歴書・職務経歴書の書き方」 — 確認日 2026年9月6日
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